ムーブメント紹介 2 Cal.5206
- 2022.11.21
- ムーブメント紹介
- 52系, LM(ロードマチック)
スペック
メーカー | SEIKO | キャリバーNO. | Cal.5206 |
振動数 | 8振動(28,800) | 製造地 | 亀戸(第二精工舎) |
動力 | ゼンマイ(自動巻き) | 機能 | 秒針規制・日付・曜日・手巻き |
石数 | 23石.25石 | 特徴 | 日付曜日瞬間切替 |
採用モデル | ロードマチックスペシャル(前期) | 時期(およそ) | 1971~1973年 |
概要
ロードマチック商品群の中でも、第二精工舎(亀戸)生産モデルの「スペシャル」に搭載された機械です。
ロードマチックは、
諏訪精工舎(諏訪) 56系ムーブメント(5601・5605・5606・最後期には5626)1968~
第二精工舎(亀戸) 52系ムーブメント(前期5206・後期5216)1971~
と、いくつかのムーブメントが搭載されていました。
詳細は、それぞれの解説(準備中です)に譲ります。
特徴
当初、諏訪精工舎(諏訪)製の56系ムーブメントでスタートしたロードマチックは、1971年(カタログ掲載開始時期より推測)より第二精工舎(亀戸)製の52系ムーブメントを搭載した「スペシャル」をラインアップに追加します。
56系・52系のムーブメントは共通性・互換性はなく、それぞれ独自の設計となっています。
56系ロードマチックでは6振動のムーブメントは8振動で、カレンダーは56系ではゆっくり切り替わるものでしたが、Cal.5206ではクイックチェンジ(12時前後に曜/日とも瞬間で切り替わる)となっています。
また、カレンダーの日付を手動で早送りすると(りゅうず操作は一段引きで時計回り~上方向~に動かす)、ぜんまいが一緒に巻かれます。これは52系全体の特徴です。
りゅうず一段引きで反時計回り~下方向~に動かすとぜんまいは巻かれず曜日の早送りができます。
りゅうず二段引きで秒針は停止(秒針規制機能)し、時刻の調整ができます。
りゅうずを引き出さない状態で時計回り~上方向~に動かすと、ぜんまいが巻かれます。ただ、ロードマチックはりゅうずが小さく、かつケースに半分ほど埋まっているものも多く、そういうモデルは手巻きはやりにくいです。
高振動かつカレンダーのクイックチェンジを搭載しているムーブメントは、現代においても「ちょっといい」機械だと思います。
マイナーチェンジでCal.変更
1974年(カタログ掲載時期より推測)には、Cal.5206は改良を受け、Cal.5216になっています。
格好良いカレンダーのクイックチェンジ機構ですが、これによりカレンダーの故障が頻発するようになったそうです。主に「日付切替不可時間帯」にカレンダーを操作することに起因するとのことです。※1
これにより、日付曜日のクイックチェンジ機構を廃止し、「日付切替不可時間帯」を廃し、※2 ゆっくりとカレンダーが切り替わるようになっています。詳しくはCal.5216のページに記載します。
確かに、現在入手できるCal.5206を搭載した時計は、カレンダーのクイックチェンジが壊れていることも多く、また故障していない機械も、特に曜日の早送りが引っかかるような挙動をするものが多いです※3。
なお、見分け方としては、写真の通り「オリジナルであれば」ケースの裏にあるRef.で判別できるほか、上写真の通り、文字盤の「Special」の表記が筆記体であればカレンダーはクイックチェンジするCal.5206を、ブロック体であればカレンダーはゆっくり切り替わるCal.5216を搭載しています※4。
ただし、現在流通している中古品は、修理などを経てオリジナルの状態でないこともあるので、ケースや文字盤と機械(中身)が合っていない個体もあり、その辺りは注意が必要です。
8振動・クイックチェンジといろいろと心くすぐるムーブメントですし、文字盤の筆記体「Special」も格好いい。なのですが、管理者が入手した未整備の個体は、そこそこの確率でカレンダーに問題を抱えていました。また、何故か不動の個体と巡り合う機会も多い気がします。
もっとも、触っている個体が少ないので、たまたまとも思いますが。。。
確かにカレンダーは弱いですが、だからこそ、当時の技術者は改良版のムーブメントを世に送り出したのかなと思います。
※1 「日付切替不可時間帯」とは、機械内部でカレンダーの変更が行われている時間帯で、多くの時計で午後9時~午前3時くらいを指す。この時間帯に日付の早送りを行うと、内部機構の破損を起こし日付機構が壊れてしまう。
※2 Cal.5216に限らず、メーカーが「日付変更不可」の時間帯がないとうたっているモデルでも、時計が午後8時~午前4時に当たるときのカレンダー早送りは、内部で動いているカレンダー機構の負担となるので行うべきではありません。
※3 この場合、管理者は無理に曜日の早送りをせず、一度りゅうず二段引きで針を動かし、別の時間位置にしてから改めて試してみるようにしています。
※4 後年登場した「ロードマチック シルバーウェーブ」で52系の機械ながら「Special」表記のないモデルが存在することを確認しています。ほかにも存在するかもしれません。
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