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ムーブメント紹介 1 Cal.5606

ムーブメント紹介 1 Cal.5606

スペック

メーカーSEIKOキャリバーNO.Cal.5606
振動数6振動(21,600)製造地諏訪(諏訪精工舎)
動力ゼンマイ(自動巻き)機能秒針規制・日付・曜日・手巻き
石数23石.25石バリエーション5601(カレンダーなし)5605(日付のみ)
採用モデルロードマチック時期(およそ)1968~1976年(ロードマチックとして)
NEOアンティーク国産Watch調べ。メーカースペックと異なる可能性があります。

概要

5606-7250のムーブメントです。未整備の個体です。

ロードマチック登場時より終期まで採用されていたムーブメントです。

ロードマチックは、

諏訪精工舎(諏訪) 56系ムーブメント(5601・5605・5606・最後期には5626)1968~

第二精工舎(亀戸) 52系ムーブメント(前期5206・後期5216)1971~

と、いくつかのムーブメントが搭載されていました。

詳細は、それぞれの解説(準備中です)に譲ります。

※管理者はワンピースケースを開けられないのでCal.5601の写真はありません。また、Cal.5605は保有しておらず紹介ができません。大変恐縮です。。。

特徴

当時はまだクオーツ腕時計が登場する前で、機械式時計が腕時計の中でも一般的でした。

セイコーの生産拠点は、諏訪(諏訪精工舎)と亀戸(第二精工舎)と別れており、それぞれに機械を開発していました。

諏訪に生を受け、その後、8振動となり、キングセイコー・グランドセイコーにも搭載されることとなる56系キャリバーですが、そのスタート点になったのが「ロードマチック」です。

このキャリバーで現在の時計にも多く見られる「2か国語カレンダー」が普及しました。また、薄型、軽量な機械で、ワンピースケースと合わせ、軽くて薄い、当時のニーズを満たすモデルを提供していました。※1

ワンピースケースの一例。

なお、56系・52系のムーブメントは共通性・互換性はなく、それぞれ独自の設計となっています。

操作性も現在の時計とほぼ変わらず、日付曜日付のモデル(Cal.5606)であれば、

りゅうず一段引きで時計回り~上方向~に動かすと曜日の早送り、反時計回り~下方向~に動かすと日付の早送りができます。(52系の機械とは逆ですね)

曜日の早送り時に和英表示(日本モデルの場合)※2を選択します。

りゅうず二段引きで秒針は停止(秒針規制機能)し、時刻の調整ができます。

りゅうずを引かない状態で時計回り~上方向~に動かすとぜんまいが巻かれます。管理者の好みになりますが、56系のぜんまいを巻き上げる感触はとても気持ち良いです。

ロードマチックの56系ムーブメントは、基本を6振動としていることもあり、現代~高振動が当たり前ともいえる~では、あまり評価をされていない印象ですが、きちんと調整すれば精度も出て、操作性も癖のない、よい機械だと思います。※3

※1 もっとも、ワンピースケースは裏蓋が開かないことで整備性が良くないとされ、さらに72年ごろからカットガラスが流行するようになると、時計は厚く重い方向に動いた気もします(管理者の主観です)。

※2 日本においては例えば「日」と「SUN」のように。56系ムーブメントを搭載したロードマチックやキングセイコーは海外でも販売され、日本語に当たる部分は仕向け地の言語にされている機械も存在します。現在の海外向けセイコー5をイメージいただければよいかと思います。

※3 56系の機械については、唯一かつ最大のアキレス腱ともいえる「揺動レバー」の歯車破損がイメージを悪化させている部分があるとも思います。これについては下記で。

揺動レバー問題

最初期以外の表記。なお、最初期は「LM」エンブレムがなく「LORD MATIC」のみとなっています。

恐らく、56系ムーブメントを知っている方であれば認識されていると思います「揺動レバー」。

カレンダーをりゅうずで早送りする際に、この部分の歯車で送るのですが、歯車を破損させた時計が非常に多く、中古未整備でこの時計を入手するとかなりの確率で「カレンダー早送り不可」の個体に出会うことになります。

これは、「日付切替不可時間帯」※4に操作をして壊してしまったことや、また後年セイコーの仕様変更でこの歯車が金属からプラスチックに材質変更されたことで、経年劣化が進みやすくなったことが原因と言われています。

管理者が聞いた話では、材質が金属からプラスチックに変更されたのは、「プラスチックの特性を生かし、歯車をスリップさせること」でカレンダーの誤操作での内部ダメージを防ぐためとのことです。

当時の時計技術者は、カレンダーの故障に真摯に向かい合っていたのかなと思います ※5が、経年変化でプラスチックが破損し、今も悩まされるのは、「現代に生きる男」※6としては複雑な思いです。

余談ながら、管理者も普通に安全な時間帯にカレンダーを操作していて、突如カレンダーが空回りする(=壊れる)というトラウマ級の経験をしています。安全な時間帯にしているにも拘らず、自らの手で壊してしまうというトラウマを植え付ける、恐るべしプラスチック製歯車、というところでしょうか。

2000年代前半くらいまでは、揺動レバーの歯車がもう入手できないということで忌避された56系ムーブメントですが、最近は修理ができるようになっているようです。

また、その影響からか、ロードマチックの中でもカレンダーを搭載していない、Cal.5601を搭載したモデルは常に人気があるようです。

※4「日付切替不可時間帯」とは、機械内部でカレンダーの変更が行われている時間帯で、多くの時計で午後9時~午前3時くらいを指す。この時間帯に日付の早送りを行うと、内部機構の破損を起こし日付機構が壊れてしまう。

※5 「52系ムーブメント」も、機構としては格好いい「瞬間カレンダー送り」を搭載していましたが、1973年ごろからその機構を排したムーブメントにマイナーチェンジをしていますので、カレンダーの故障(「日付切替不可時間帯」操作を含め)は当時から頻発していたのかな、と推測します。

※6 セイコーは当時より今でも刺さるキャッチコピーを多く用いており、「現代に生きる男の」はロードマチックのコピーでした。なお、現代に生きる管理者も、ロードマチックを日々愛用しております。

揺動レバー問題を除けば、機械の感触もよく癖も少ない、とてもよい機械と思います。